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2005/11/01

映画『蝋人形の舘』(ネタばれあり)

お前も蝋人形にしてやろうかーっ!

という雄たけびが日本の茶の間(←死後?)をにぎわしたのは、何年前のことだったでしょうか。この映画はもちろん、二十数年前に早稲田大学の音楽サークルから地球征服計画を始めた悪魔たち「聖飢魔II」とは、なんの関係もありません。

フットボールの試合を観にいく途中で道に迷った男4人・女2人のアメリカ人学生たち。夜明かしキャンプに選んだ森の奥からただよう死臭。クルマに轢かれて死んだ動物たちの廃棄所とそれを捨てにくる廃棄人。人気の感じられない寂れた町。教会で行なわれている誰かの葬式。そして、町外れにある蝋人形館。もう、これでもかってくらいにお膳立てがそろってます。

ストーリーは、あいかわらずといえばあいかわらず。学生たちが殺人鬼に襲われて、蝋人形にされて、何人かは魔の手を逃れて生き残る。今回はふたりが生き残りましたが、このふたりが、ただ殺人鬼から逃げ回るだけでなく、他の友人を助け出すため、そして兄弟を守るために、殺人鬼に立ち向かっていくのがいいですね。

殺人鬼はもともと顔の部分が結合して生まれてきた奇形の双子(シャム双生児)を切り離したふたりで、彼らと戦い、生き延びたふたりも双子の兄と妹(ということは二卵性の双子やね)。この映画は、兄弟対兄弟、双子対双子の戦いだったのです。だからどうだ?といわれれば、どうなんだという感じもしますが、古の時代は「双子」=「よくない印」だったこともあり(そのため、生まれた時点で片方を殺した、あるいはすぐに片方を里子に出し、双子の兄弟が出会わないように画策したり)、そのあたりの古い信仰なども引きずっているというか、想起させようとしているのかもしれません。

ストーリー的にはこれといってビックリするようなことのない、ごく素直なものだと思うのですが、蝋人形のつやつやとした、しかし精気のない質感は異様で、グロテスクかつ美しい。町の住人すべてが蝋人形というのも、冷静に考えれば滑稽な感じもするのですが(とくに窓辺でカーテンを開けて外をのぞくばぁさん人形)、映画の世界に身をゆだねているあいだはひたすら不気味に感じられます。

そして圧巻は、やはり映画のタイトルとなっている「蝋人形の舘」、というか、蝋の舘(映画の原題も『House of Wax』ですし)。外壁、内装、階段その他の建物自体から調度品にいたるまで、すべてが蝋でつくられているこの建物。映画の前半で被害者たちが初めてこの館を訪ね、すべてが蝋でできていると気づいたときに、いったいどうやってつくったんだよとか思わず突っ込みを入れてしまいましたが、これがクライマックスでみごとな地獄絵図を見せてくれるのです。地下の蝋人形製作所から出荷した火が地獄の業火となって舘を包み、溶かし、焼き尽くす様は圧巻です。その最中のどろどろとした蝋のうえで繰り広げられる殺人鬼との戦いや、焼け落ちていく館からの脱出劇なども、なかなかの迫力。うん。ここを観るだけでも、なんとなく劇場で観てよかったと思います。

また、こういった学生系ホラー?では、やはり残酷な殺害シーンが見どころ。今回も、いろいろやってくれました。6人の学生のうちふたりが生き残るということは、4人しか殺されないわけで、猟奇大量殺人を期待するとちょっと肩透かしかもしれません。それでも、ひとりは巨大なナイフ2本で首を切り落とされ、ひとりはナイフで首をひと突き(しかもそのまま地面にナイフで留められてるみたいな形。『サスピリア II (赤い深遠)』でイモリの首をピンで刺して地面に固定していた女の子を思い出しました)。古い鉄パイプが頭を貫通する人もいたし、聖飢魔IIの歌のごとく生きたまま蝋人形にされた人も。

それぞれがどれも「イタタタ」って感じなのですが、個人的にいちばん「イタッ」と思ったのは、最初の被害者である男の子がアキレス腱をナイフでスパッと切られるところ。これはいたそう。『ペット・セメタリー』で生き返ったゲイジがジャドおじさんのアキレス腱をメスで切るシーンを思い出しました。そして、もうひとつ。けっきょく最後まで生き残りましたが、女の子が指先をニッパーで切り落とされるシーン。首が切り落とされるとか鉄パイプが頭に刺さるといった派手なシーンよりも、こういった小さなシーンのほうが痛い感じが自分はします。うぅ、えぐえぐ。

うん。なかなかおもしろかったですよ。何度も観ようとは思わないけれど、夜中にテレビとかで放映されたらまた観てしまうでしょう。

それと、エンドロールの最初のほうでかかっていたヘヴィ・メタル。あれ、だれのなんていう曲だろう? えらくメロディアス&ドラマティックで、思わず感動してしまいました。スタッフロールで確認しようと思ったのだけど、読みきれなかった。

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