CRISTIANO DE ANDRE' / SCARAMANTE
お父さんはいわずと知れた偉大なカンタウトーレ、Fabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)。いわばCristianoは2世シンガーなわけですが、親の威光に依存することなく、ぽつぽつとではありますが味わいの深い作品をリリースし続ける、中堅どころのカンタウトーレに育ちましたね。もともとはFabrizioのコネクションだったのでしょうが、Massimo Bubola(マッシモ・ブボラ)やMauro Pagani(マウロ・パガーニ)といった才能のあるアーティストたちにもかわいがられているようですし、Daniele Fossati(ダニエーレ・フォッサーティ)との関係も続いているようですし、それもきっとカンタウトーレとしてのCristianoを彼らがきちんと認めているからなのでしょう。
2001年リリースの『Scaramante』は、彼の5枚目のソロ作品のようです。ずっと『L'albero della cuccagna』(1990年)がソロ・デビュー作だと思ってたのですが、オフィシャル・サイトのディスコグラフィによると1987年に『Cristiano De Andre'』というアルバムをリリースしているようです。1992年に『Canzoni con il naso lungo』(1993年に「Dietro la porta」を追加収録して『Cristiano De Andre'』というタイトルで再リリース)、1995年に『Sul confine』とコンスタントにアルバムをリリースしたのち、しばし沈黙。6年ぶりに発表したのがこのアルバムです。その後、2003年に『Un giorno nuovo』が出ていますが、これはベスト盤のようですので、現時点ではこの『Scaramante』が最新のオリジナル・アルバムといえそうです。
M1「Buona speranza」はスパニッシュ・テイストのアコースティック・ギターと重いウッド・ベース、そこにかぶさる民俗音楽風のパーカッションが印象的です。草原を渡る風のようなさわやかさを感じます。
M3「Sei arrivata」もアコースティック・ギターの軽やかなコード・ストロークとカッティングが全体に響く、ラテン/スパニッシュ風の軽快な曲です。
もちろん、M2「Lady barcollando」のような、イタリアらしい明るいフォーク・ポップスもあります。
M4「Fragile scusa」にはキーボード・オーケストレーションが導入され、壮大で派手な感じのスロー・ポップスになっています。演奏はけっこう派手なのですが、歌メロはカンタウトーレ的な素朴さを感じます。
M5「Un'antica canzone」ではウッド・ベースの響きとチープ感漂うシンセサイザーのメロディが不思議な雰囲気を醸しだしています。少し民俗音楽風のニュアンスもあるスローな曲。
M6「Le quaranta carte」は非常にオーソドックスな感じのミディアム・テンポのイタリアン・ポップス。でも自分、こういう感じ、好きです。メロディアスなラップ・パートもイタリア的ですし、なめらかで素直な歌メロもイタリアらしくていいです。Luvi De Andre'(ルーヴィ・デ・アンドレ。妹さんでしたっけ?)のコーラスが「ライオンキング」的なエキゾティックさを加えます。
M7「Sapevo il credo」はほとんどギターの弾き語りに近いシンプルな曲。その他の楽器はそっと静かに雰囲気を加える程度です。その分、Cristianoのヴォーカルの味わいが活きています。作曲にクレジットされてるFabrizio Casalino(ファブリツィオ・カザリーノ)って、『Come un angelo』(1998年)を出した彼だよな、きっと。最近は裏方に回っちゃったのでしょうか。
M8「Sempre ana'」はスローなポップスなのですが、メロディや構成などがちょっと平凡かな。あまり印象に残りません。Mauro Pagani(マウロ・パガーニ)との協作なんですけどねぇ。
M9「La diligenza」は、なかなかおもしろい曲です。歌いだしのメロディも印象的ですし、途中ではレゲエ風味のリズム・アレンジが入り、その後には民俗音楽風味になったりと、聴いていて楽しい。しかも、ほどよく哀愁も漂っています。
アルバム・ラストのM10はアコースティック・ピアノをバックにしたスロー・バラード。いかにもイタリアらしいといえばイタリアらしいし、いかにもアルバムの最後といえば最後らしいのですが、曲自体はそれほど印象的ということもないように思います。自分の好みからいえば、M9で終わっていたほうがよかったかもしれません。
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