RON / UNA CITTA' PER CANTARE
たしかデビューは1970年代の中ごろだったような気がします。最初の頃は本名のRosalino Cellamare(ロザリーノ・チェッラマーレ)で活動していましたが、その後Ron(ロン)に改名し、おそらくいまも現役なんじゃないでしょうか。最近はあまり名前を聞かない気がするけれど。アルバムもけっこうたくさんあり、根強いファンもいるようです。
しかし自分にとっては、いつも「もうちょっとなんだけどなぁ」という物足りなさや歯がゆさを感じてしまうカンタウトーレ。メロディもそこそこきれいだし、ヴォーカルもそこそこ味わいがあるのだけど、けっきょく「そこそこ」でしかなく、あともう一歩のドラマというか奥深さというかアピールの強さがあれば... と、いつも思ってしまいます。
そんなわけで今回も、たまたま1980年代前半のアルバム3枚のボックス・セットが中古で安く売っていたので買ってしまいましたが、それほど期待せずに聴いたのですよ。で、聴いてどうだったかというと、やっぱり「もうちょっとなんだけどなぁ」という感じでした(笑)。
1曲目のアルバム・タイトル曲はいい感じで、ヴァイオリンとギターのみの地味~な歌から途中でコンサートでの歓声のSEが入りその後はオーケストラが導入されて盛り上がっていく、という構成は、ベタな感じではあるけれど、素直にじ~んときてしまいました。この曲で「もしや今回は!」とかなり期待したほどの、なかなかの曲です。
しかし、その後は良くも悪くもないロックだったり、すっごく普通なフォーク・ソングだったり、微妙に平凡なポップスだったり。
M2「Come va」とM3「Nel deserto」はロック系の曲なのですが、これ、きっとDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)とかが歌ったらもっとかっこいいと思うんですよ。いや、ほんと、David Bowieに歌ってほしい。Ronには、こういったちょっとクセのあるポップ・ロックをかっこよく歌いこなすのは難しそうです。
M6「Mannaggia alla musica」はFrancesco De Gregori(フランチェスコ・デ・グレゴーリ)の曲なのですが、いかにもDe Gregoriらしい、とても素朴なフォーク・ソングです。これ、De Gregoriが自分で歌ったなら、素朴ななかにも味わい深さが感じられるものになるのだろうけど、Ronが歌うと普通のフォーク・ソングになっちゃう。
M5「Nuvole」などは、おしいんだよなぁ。Giampiero Reverberi(ジァンピエロ・レヴェルベリ)のアレンジによるオーケストラも入って、イタリアらしいやわらかなメロディもあって、ロマンティックに盛り上がっていきそうな気がするのに、気がするだけで終わっちゃう。なんでだろうなぁ。メロディ自体は悪くないのに、曲全体の構成というか、曲としてのドラマのつくり方があまりうまくないんだよなぁ。
アルバム・ラストのM8「Tutti cuori viaggianti」も、イントロでは少しジャジーな雰囲気を漂わせてて、なんとなくしゃれた大人のロマンを振りまくのかと思ったら、歌が入ったとたんに普通のポップスになっちゃうし。
そんなわけで、自分の感想としては「あいかわらずなRon」といった感じのアルバムですが、それでもM1がいい曲だったので、それだけでもOKとしましょう。
ちなみにこのアルバムに収録されている曲のほとんどはLucio Dalla(ルーチォ・ダッラ)とRon(クレジットでは本名のR.Cellamareになってるけど)によるもので、M3はDe Gregoriとの曲、M6はDe Gregoriのみの曲だったりするのですが、アルバム中ベストと自分には思えるM1はL. Dalla-O'Keefe名義なのですよ。O'Keefe(オキーフェ?)って誰だろう? わかりませんが、少なくとも、曲づくりにRonがかかわらないほうがいい曲ができる、という証明のような気がします(笑)。
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