映画『シン・シティ』
先週末、映画『シン・シティ』を観てきました。
ハード・ヴァイオレンス・バット・スタイリッシュな映画ということで、一部でずいぶん話題のようですね。実際、えぐいシーンがこれでもかと出てくるけれど、そのシーンの映像自体はメチャスタイリッシュでカッコイイという、これまでにあまり観たことのない感覚の映画でした。
アメリカのどこかにある、汚職と欲望と暴力に満ち溢れた架空の町シン・シティを舞台に、3つのお話+αがオムニバス形式で展開されます。これらの話は、舞台がシン・シティであること、時期がおおよそ同じころであることから、それぞれの登場人物が別のお話の画面にちょろっと映りこむことはありますが、それぞれの話自体は独立しています。
自分、こういったオムニバス形式の映画って、そういえばあんまり好きじゃなかったってことを、あとで思い出しました。どうも、映画を観たというよりは、単発のテレビドラマを3つ続けて見たような、あるいは『夜にも奇妙な物語』とかを見たときのような、軽い感じを受けちゃうことが多いんですよね。映画全体としてのテーマがよくわからないものもたまにあるし。物語の重みとか深さとかを感じられないというか。
この映画も、2時間の中に3話+αも詰め込むのではなく、1時間半くらいでひとつの話をじっくりと見せてもらったほうがよかったなぁと思ってしまいます。とくにブルース・ウィリスが主役の話は、もっともっと深みと厚みのあるものになると思うのだけど。悪徳の町シン・シティに生きる「最後の正義」が60歳を越えた老刑事というのは、なかなかハード・ボイルドな渋い設定だと思いますし、演じるブルースもいい味を出してたし。
それぞれの話自体のつながりはあまりないけれど、そこで起きる事件の元凶をたぐるとロアークという権力者ファミリーにつながるという共通項があり(第2話はそうではなかったかしら)、うそと金と暴力にまみれた町でひたむきな愛のために戦う孤独な戦士を主役に置くというスタイルを通すことで、映画全体としてのある種の統一感と方向性を演出しています。
町の権力者であり、すべての悪と暴力と汚職の元凶でもあるロアーク議員が「この世でもっとも強いものは“うその力”だ。うそこそが世の中を動かす」というようなことをいったり、シン・シティの住人(だったか?)が「アメリカほどいい国はないぜ」などといっていたりするなかに、現代アメリカのおごった姿への皮肉と批判を見る、そして、どんなに世の中が悪にまみれ暴力にうもれ汚職がはびころうとも“愛”だけは死なない、“愛”のみがそれらの邪悪な力に立ち向かいうる力なのだ、というのがこの映画のテーマだ、というようにも考えられるのだけど、でもけっきょくマーブ(ミッキー・ローク)もハーティガン刑事(ブルース・ウィリス)も死んじゃったのですよね。悪の根源は、愛の力では根絶できないのですよ。という皮肉も含んでるのかな?
そんなわけで、おもしろいといえばおもしろいのだけど、だからどうだといえばだからどうなのという感じでもあり、単純に雰囲気を楽しむ映画かなぁという気がします。ノワールでハード・ボイルドなアメリカン・コミックをそのまま「動く絵」にしただけで、「映画」を観たという印象は残りませんでした。
ほとんどのシーンがモノクロで、衣装や小物や血など映像の一部のみに鮮烈な赤や黄色といった配色を施すという表現方法はかっこよくはあるけれど、また、それゆえに残酷シーンがそれほどスプラッタにならずに観られるという人もいるけれど、自分としては全編フルカラーの飛び散る血液や脳みそなどで吐き気をもよおしながらそれでも観る、というほうがよかったかなぁとも思います。
しかし、キャスティングは非常によかったですね。ミッキー・ロークはすごいメイクのためにぜんぜんわからなかったけど、ブルース・ウィリスもベニチオ・デル・トロもすごくぴったり。そして驚愕の!イライジャ・ウッド。キャスティングした人、すごいや。ジョシュ・ハートネットの役回りがなんだか中途半端でしたが、これは続編への複線?
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 2022年1月から新しいテレビドラマが始まったわけだが(2022.01.29)
- あやしい彼女(2016年)(2020.09.21)
- マスカレード・ホテル (2019)(2020.03.22)
- 激走!5000キロ The Gumball Rally (1976)(2020.02.16)
- アナベル 死霊人形の誕生 Annabelle: Creation (2017)(2019.12.31)
コメント
小丸は、刑事とか元凶とかをヴァイオレンスしたかったの♪
投稿: BlogPetの小丸 | 2005/10/25 15:15
もあさん、こんにちは。
ネットで『シン・シティ』の映画評を見ても、
あまり良い評価を受けていないみたいですね。
私はこの映画をまだ見ていないのですが、
ミッキー・ローク(好き)が出ているのなら、
見てみてもいいかなと思います。
『ナイン・ハーフ』はとても印象に残っています。
『夜にも奇妙な物語』というテレビ番組もありましたか?
投稿: ムーン・フェアリー・ヒロコ | 2005/10/26 09:38
この映画、好きな人はすごく好きみたいですよ。独特な味わいがあるのはたしかですし。実際、おもしろくないわけではないし。ただ、映画を観ているというよりは、アメリカン・コミックを読んでいるといった感じのほうが強いなと自分は思ってしまいますが。
ミッキー・ロークは、『ナイン・ハーフ』のころの面影はないように思います。先日NHKの『英語でしゃべらナイト』にも出てましたが、最初、誰かと思った。それに映画ないでは特殊メークで顔も体つきもぜんぜんわからないし(笑)。
投稿: もあ | 2005/10/26 17:15