LA DIFFERENZA / PRESO!
2005年のサンレモ音楽祭新人部門参加曲「Che faro'」を収録した、La differenza(ラ・ディッフェレンツァ)のアルバムです。この曲は、新人部門で2位をとったんでしたっけ?
たぶん、まだデビューしてそんなに経ってないグループなんじゃないかと思うのですが、ジャケットに写ってるメンバーの写真を見ると、なんだかみんな冴えない感じの兄ちゃんです。ブックレットの裏表紙には写真の下にメンバーの名前が書いてあるのですが、写真での並び順とメンバー名の並び順が同じだとしたら、ドラムのMax(マックス)、あんた、けっこう年いってるんとちゃうん? キーボーディストのJakka(ヤッカ)、あんた、キーボーディストには見えましぇん。リズム隊だろ?
などと、どうでもいいツッコミを入れちゃおうかなぁというくらい、あんまりセンスのないジャケットです。ちなみに、右上でアルバム・タイトルの『Preso!』がツタに絡まってるようなイラストは、なんだかサイケデリック。
サンレモ参加曲の「Che faro'」はマイナー調で古いブリティッシュの香りがするノスタルジックな哀愁炸裂のバラード系ポップスでしたが、アルバム全体を聴いてみると、こういったマイナー系の曲は少ないみたいです。メジャーキーでミディアム・テンポの、けっこう軽快な曲がたくさんあります。なんとなく演奏にチープ感を漂わせて人懐こい感じを醸しつつ、シンセサイザーのオーケストレーションなんかは意外と分厚いという、チープなのにファットというなかなかいい感じの演奏を聴かせてくれます。
全体に古いブリティッシュ・ポップ・ロックの香りが強くあり、こういうのってLunapop(ルナポップ)あたりからイタリアの若いグループにけっこう蔓延してるよなぁ、イタリアの若手グループがどんどんブリティッシュ・ノスタルジィに向かってるなぁ、などと以前は感じていたのですが、最近では「古いブリティッシュ・ノスタルジィを感じさせるようなポップ・ロック」=「イタリアの最近のポップ・ロック」というような印象になってきちゃいました。これがイタリアのいまのグループ・サウンズだ(表現がおかしいか?)、みたいな。
だいたいね、いま20代前半くらいの若い音楽ファンの多くは、古いブリティッシュ・ポップ・ロックなんて、あまり知らないでしょうしね。Electric Light Orchestra(エレクトリック・ライト・オーケストラ)とかKinks(キンクス)とかElton John(エルトン・ジョン)などといった有名どころはいまでもたまに古い曲を聴くこともあるかもしれないけれど、彼らのような独特のやわらかさと、アメリカのポップスのように甘いだけでないユニークさのようなものを持ったブリティッシュ・ポップ・ロックが、むかしはたくさんあったのよ。あの頃の独特の甘さと哀愁が、ちょっと姿を変えて、最近の若いイタリアン・ポップ・ロック・グループの音楽にたくさん練りこまれている感じがするのですわ。
このアルバムで、とくにそういった印象が強いのが、やはりサンレモ参加曲のM1「Che faro'」でしょうかね。この曲はかなりノスタルジックで哀愁も強め。M4「Pensiero dolcissimo」も、さびで一気に演奏が厚くなるという、イタリアらしい美と哀愁のバラードですね。
でもM2「Percezione 90」やM3「Preso!」では明るい感じが前面に出てきて、べたべたと甘い哀愁を垂れ流すグループじゃないぞっていう主張?を感じます。M7「Lola」やM8「Onderadio」などは軽快で、むかしの歌謡曲ロックみたいなチープ感もあって、なんか楽しげ。ちなみにM7で聴かれるオルガンの響きも懐かしさを強めます。M9「Non cambiare discorso」はバラードだけど、メジャーキーを使ったシンプルで素直なメロディがさわやかで明るい感じを出しているのが好ましいです。
ベースがけっこう重い曲が多く、しかも単純にルートを8分音符できざむだけといったアレンジも多くて、それがブリティッシュ・ノスタルジィを感じさせる一翼をになっている部分はあるものの、ときに単調かなと感じてしまうこともあるのだけど、彼らがそういうアレンジしかできないというわけではない(意図を持って、わざとそういうアレンジにしている)というのが明確にわかるのが、M6「Sogno interrotto」。この曲、自分はけっこう好きだぁ。アコースティック・ギターのクリアなコード・ストロークで始まるイントロとか、なんだか印象的。ベースも曲前半ではフレーズを奏でて動きをつくり、さびではルートのほうに戻っていってどっしりとした厚みを出すという役割を演じてる。ノスタルジィとセンチメンタルを感じさせる歌メロも魅力を感じるし。
自分が以前にイタリアのアーティストたちに求めていた「イタリアらしさ」は、いまのイタリアの音楽からはなかなか見出すことができなくなってしまって、それはそれで残念ではあるのだけど、La differenzaとかを聴いてると、いまのイタリアの若者たちの音楽には、英米からの影響は強いものの、やはり英米とまったく一緒ではない、いまのイタリアの若いアーティストならではの「イタリアらしさ」といったものがあるのかもなぁと感じます。そして、それはそれで悪くないかなぁと思えるようになってきた今日この頃です。
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