ラ・マンチャの男
帝国劇場でミュージカル『ラ・マンチャの男』を見てきました。
帝国劇場って行くの初めてだったのですが、フロアにも客席にも階段にもふかふかの絨毯が敷いてあって、あまりにふかふかなので歩きにくい。階段とかでこけそうになりましたよ。あと、客席が狭い。座席前のスペースが狭くて、ゆったり座れずに疲れた。
で、舞台です。松本幸四郎と松たかこの親子競演が話題だったりします。幸四郎さんは、テレビドラマで見るととてもいい感じなのですが、本業?の歌舞伎の舞台に出ているときはその良さがわからないのですよ、自分には。声があまり通らなくてなにいってんだかわかんないし、演技そのものもいいんだか悪いんだか。なので、中村獅童さんなどと同じく、実は舞台よりテレビ向き、歌舞伎よりも現代劇向きな役者さんなのかなぁと感じてました。その点でいえば、ミュージカルのほうが歌舞伎よりもいいかもしれないというちょっとした期待もあったりして。
でもね幸四郎さん、ミュージカルでもやっぱり声がよく通らない。というか、歌舞伎のときの発声に近い声の出し方をしてるな。なので、やっぱりなにをいってるんだかよくわからない。せりふのときも、歌のときも。それと、歌のシーンでの音のとり方が、ほんの少しだけフラット気味なのね。もごもごした発声で微妙にフラット気味で歌われるってのは、なかなか気持ちが悪いものです。
そして、松たかこさん。ポップ・シンガーとしてはそれなりに上手に歌う松さんですが、ミュージカルとなると、ちょっときついな。そこそこ力強いファルセットも聞かせてくれるのだけど、声量が少し不足。あと、ところどころで音程が不安定になる。
この舞台、全体に出演者の歌がもうひとつなんですよ。なかには牢名主役の人のように素晴らしい歌声を聞かせてくれる役者さんもいるのだけど、そういう人が一握り。歌のうまい人とそうでない人との差が大きく、しかも、(幸四郎さん・松さんを含め)そうでない人のほうが重要な役どころをになっている部分が多く、全体にちょっとバランスがばらんばらんな感じ。やはり音楽を主体にしたミュージカル劇では、ふだんからきちんと歌っている人に歌ってほしいわ。とくに前回見たミュージカルがフランスの『十戒』で、その圧倒的な歌唱力に魅了されたことと比較してしまうと、今回の『ラ・マンチャの男』出演者たちの歌唱力不足は致命的な感じがする。
あとなぁ、曲が思ったよりよくなかったな。アンドリュー・ロイド・ウェーバーの『オペラ座の怪人』ほど単調なメロディのくりかえしではなかったけど、もう少しメロディに情感がほしかった。まぁ、シンガーがもっとエモーショナルに感情を乗せて歌える人たちだったなら、あのメロディももう少しドラマティックに響いたのかもしれないけれどね。
芝居自体はなかなかおもしろいです。おおよそのストーリー(有名な「ドン・キホーテ」のお話ね)は知ってるし、ところどころに笑わせるところも用意してあるし、感情を高ぶらせるところもあるしで、およそ2時間30分という上演時間を長く感じさせない。それを考えると改めて、もっと実力派の、歌唱力があってふだんからきちんと歌っているアクター/アクトレスによるキャスティングで見たかったよなぁと思ってしまいました。
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