PROCOL HARUM / THE LONG GOODBYE
Procol Harum(プロコル・ハルム)のフロント・パーソン、Gary Brooker(ゲイリー・ブルッカー)が中心になって企画した、Procol Harumの名曲をフル・オーケストラ入りのシンフォニック・アレンジで聴かせようというアルバム。Garyがヴォーカルをとったりはしていますが、正しくはProcol Harumのアルバムじゃありません。
録音は1994年から1995年に欠けて行われたそうです。オーケストラのコンダクターとしてDarryl Way(ダリル・ウェイ)の名前も載っているのですが、この人ってやっぱりWolf(ウルフ)のDarrylですよね、きっと。
全部で12曲が収録され、すべての曲にフル・オーケストラが導入されています。半分ぐらいの曲はいわゆる名盤と呼ばれた初期のころのアルバムに収録されていたものなので知っていますが、残り半分は、自分は初めて聴くもの。再結成後のアルバムに収録されていたのでしょうか。
どの曲も非常にシンフォニックなアレンジがされていて、とてもクラシカル。曲によってはオーケストラと合唱プラスGaryのヴォーカルのみといったアレンジもあり、ポップスというよりはかなりクラシック曲に近いような印象になっています。
合唱入りシンフォニック・ポップスは自分が大好物とするところではありますが、いわゆるポップ・ミュージック・インストゥルメンツ、つまりドラムやベースやギターがきちんと導入されていないシンフォニック・ポップスは、実はあまり好みではなかったりします。なので、バックがオーケストラ・オンリーの「A Salty Dog」や「A Whiter Shade of Pale」「Strangers in Space」とかは、曲自体はいいしドラマティックだしクラシカルだしある種神聖な感じすらするのだけど、ちょっと物足りなく感じてしまいます。
その点、バンド+オーケストラという形態で演奏される「Conquistador」や「Hamburg」などはいい感じ。また、インストゥルメンタル曲の「Repent Walpurgis」ではRobin Trower(ロビン・トロワー)のウォームで腰の太いギターがとてもいい音色で鳴っていますし、Matthew Fisher(マシュー・フィッシャー)はハモンド・オルガンではなく教会のパイプ・オルガンで録音に参加。もともとちょっとプログレ風な印象のあった曲がさらにいっそうプログレ風になっています。
とはいえ、「A Whiter Shade of Pale」と「Repent Walpurgis」はオリジナルの哀愁ハモンドの印象があまりに強く、オーケストラよりはモンドがなっていたほうがいいなぁなどと感じてしまう自分は年寄りでしょうか、やっぱり。
また、むかしの曲と、(おそらく)比較的最近の曲とで、曲の肌触りにずいぶん違いがあるような気がします。むかしのProcol Harumが持っていた、いかにもイギリスらしい気品の中に違和感なく織り込まれた世俗的な猥雑さが、最近の曲と思われるものには希薄で、なんか、普通のポップスになってる。Garyの特徴ある歌声も、最近の曲にはもうひとつマッチしきれていないような印象。
Procol Harumには『Live in Concert with Edmonton Symphony Orchestra』という、フル・オーケストラとの共演による素晴らしいライヴ・アルバムがあるのだけど、それとくらべてしまうのはあまりに酷。そもそも、このアルバムはProcol Harumというグループのアルバムではないからね。それに、安易なオーケストラ・アレンジがされているわけではなく、それぞれにアイデアを持って曲が演奏されているし、古いProcol Harumのイメージにとらわれずに聴けば、なかなか趣のある作品だと思う。とはいえ、Tom Jones(トム・ジョーンズ)をヴォーカルに迎えた「Simple Sister」の妙なロック乗りはどうしても違和感を感じてしまうけれど。
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