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2005/03/07

ミュージカル「十戒」

ミュージカルの舞台は以前、劇団四季の「Cats」と、ケン・ヒル版の「オペラ座の怪人」を観たことがある(いずれも東京で)のだけど、いずれもそんなにおもしろくない、というよりもつまらなかったし、感動もしなかったし、音楽もいいとは思わなかったのですよ。

そんなわけでミュージカル2連敗中のなか、期待と不安を感じながら観にいってきたのですよ、フランス製のミュージカル「十戒 (Les Dix Commandements)」を。そう、「海よ、割れろ!」で有名な旧約聖書の出エジプト記、モーセおじさんの活躍を描いた、わくわくどきどきのお話です。

座席はなんと、アリーナのいちばん前の列。だけど、いちばん右端(涙)。舞台に対する角度がめちゃめちゃ浅い。目の前にはすぐ巨大スピーカーです。う~む、ちょっと観にくいぞ。この角度だと舞台セットの柱が邪魔になって、部隊の奥のほうはよく見えんな。

などと思っているうちに、始まりましたよ。なんてったってスピーカーのまん前ですから、めちゃめちゃ音が体にぶつかってきますよ。そしていきなり、ちょっと感動しちゃいましたよ。

音楽がいい!

そう。メロディのヴァリエーションが少なくフレーズの魅力もあまりないA.L.ウェーバーの「Cats」や「The Phantom of the Opera」などとはくらべものにならないほどに、魅力的なメロディがドラマティックに構成された曲がいっぱいなのです。さすが、フレンチ・ポップス界のビッグ・ネーム、パスカル・オビスポが音楽を担当しただけあります。

そして、当然なのだけど、みなさん歌がうまい。思いっきりロック/ポップス・スタイルではありますけど。A.L.ウェーバーの映画版「オペラ座の怪人」では、ストーリーのキーパーソンであるファントムの歌の下手さ(というか、“ファントム”という役柄とロック的なヴォーカル・スタイル、歌声とのあまりのミスマッチ)にめちゃ引きだったのですが、「十戒」ではべつに“オペラ的な”歌唱が要求されるわけでもなく、普通にポップス/ロック・スタイルの歌唱で違和感がないからよかったです。

とはいえ、モーセ(Sergio Moschetto)にはもっと深くて豊かな響きのある声で歌ってもらいたかったかな。民を導く、ある種のカリスマなわけですから、もっと直接心の奥に響いてくるような、厳しさとやさしさと暖かさが共存しているような声だったらもっとよかった。偉大なる神の預言者のわりには、あまりに世俗っぽいというか、ちょっとスケベっぽいというか、色っぽいロック・ヴォーカルだな。これはこれでいい声だし、うまいんだけど。

対するラムセス(Ahmed Mouici)もいい声でした。モーセよりも少し奥行きがある感じ。配役を逆にしたほうがよかったかも。でも、それほどモーセの声との違いは大きくなく、一緒に歌うと綺麗に混ざり合いすぎてしまった感じはあります。対立するふたりなので、声にももう少し違いがあって対旋律を歌うような仕掛けになってたら、もっとよかったかな。

主役となるモーセもラムセスもいい声でしたが、もっとも魅力的なヴォーカルを聴かせてくれたのは、実はヨシュア(Pablo Villafranca)でした。響きのある力強い声。モーセ亡きあとにイスラエル人を導いてくことになる次代のリーダーの若き日々なわけですが、彼の声にはついていくかもなと思ってしまった。あと、モーセのお兄さん(のはずなんだけど舞台ではモーセよりも若い設定だったように感じられる)アロン(Fabian Richard)もいい声だったな。しかし、ヨシュアもアロンも舞台ではほとんど活躍しなかったのが残念。

女性人では、モーセの妻セフォラ(Clarisse Lavanant)のヴォーカルが素晴らしかった。セリーヌ・ディオンかってくらい。あと、王妃ビティア(Lidia Malgieri)も、愛情と哀しみを上手に歌で表現していると感じられました。ちなみにヨケベト役のAnne Warinは、ちょっと年をとって太った白石美帆みたいなルックスがグッドでした(笑)。

フランス製のミュージカルなので、歌詞は全部フランス語、その日本語訳が舞台の両脇の電光掲示板に映し出されるのだけど、いちばん前のいちばん右端という席の関係上、日本語字幕を見てると舞台が観られなくなっちゃうのですよ。なので、字幕を見るのはあきらめました。基本的な話は知っているし、ミュージカルとはいえ歌の歌詞でストーリー自体を進めたり情景の説明をしたりというタイプではなく、どちらかというと歌はそれぞれのシーンでの登場人物たちの心情を表すために使われていて、物語の進行自体は舞台転換の合間に字幕オンリーで表示されるといったスタイルだったため、歌詞の意味がわからなくてもそれほど困らないつくりだったのが助かりました。登場人物たちの心情は、言葉はわからなくても歌声の持つ情感やメロディ等の雰囲気、それに舞台での動きなどを見れば、おおよそ見当がつきますからね。

しかし、ダンサーさんたちのダンスが実はあまりきちんとそろっていない、ダンスのクオリティにけっこうばらつきがあるのが気になってしまった。ひざを伸ばして足を上げるところでは、みんなそうしようよ。なんであなたとあなただけひざが伸びないの? とかね。あと、ターンの際のスピード感とか、腕の振りのしなやかさとか、細かいところはけっこうばらばらでしたわ。

などということもあったのだけど、やっぱり「十戒」は物語自体がドラマチックですからね。イスラエル人たちがエジプトに「自由を!」と要求する合唱シーンとか、もうたまらないです。合唱はずるいです。無条件で感動モードに入ってしまう。最後の十戒を読み上げる(歌い上げる)シーンとかもね。アンコールではほとんど24時間テレビのフィナーレかよ、みんなで「サライ」を歌うのかよみたいな感じになってました。

うん。おもしろかったよ。やっぱり、ちゃんとストーリー自体がおもしろくて、いい曲がついていて、いいシンガーが歌ってくれるのであれば、ミュージカルもおもしろいし感動的なんだな。こういった舞台が期待できるなら、またミュージカルを見てもいいぞと思ったのでした。通算成績1勝2敗という感じです。でもこの1勝の価値はでかい。いいものを観ました。

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 スペクタクルミュージカル『十戒』@代々木第1体育館  素晴らしいブラボ~ 感想はこの一言!としかいいようがないですね。感動!とか素晴らしい!とかすごい!とか、... [続きを読む]

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