確率としてもしくは傾向として
昨日はQueenの『News of the world』の雑感を書こうと思ったのだけど、ココログメンテ中で書けず。またいずれ。
さて、自分は、高校生のころからプログレッシヴ・ロックのファンなのですよ。最近ではイタリアン・ポップスばっかり聴いてますが、それでも細々とプログレッシヴ・ロックも聴き続けていたりするわけで。そんで、今朝もMarillion(マリリオン)の『Brave』を聴きながら出勤したりしたわけですよ。
『Brave』... 少し前のアルバムだけど、評判いいですよね。Marillionのファンだけでなく、多くのプログレッシヴ・ロック・ファンが「名作」と呼んでいる。でも自分には、実はあまりピンとこないんだよなぁ。
こういうことはよくありまして、いわゆる「プログレ・ファン」と呼ばれる人の多くが「こいつぁいい!」と評価するグループやアルバムが、自分にはぜんぜんアピールしない。Dream Theater(ドリーム・シアター)とかIt Bites(イット・バイツ)などはその典型です。うまいなぁとかすごいなぁとかは思うけど、プログレッシヴ・ロックっていいなぁとか体中に染み渡るなぁとかは思わない。Pink Floyd(ピンク・フロイド)やNew Trolls(ニュー・トロルス)やAnge(アンジュ)やOmega(オメガ)とかは染み渡るんだけどなぁ。あるいはポップス作品であるRenato Zero(レナート・ゼロ)の『Amore dopo amore』のほうがよっぽど「プログレッシヴ・ロックぽい」ドラマと感動が染み渡る。
しかし、よく考えてみると、逆なんですよね。プログレッシヴ・ロックが好きだからプログレッシヴ・ロックをたくさん聴いてきたわけじゃないんです。自分が「いい」と思える曲、自分の感性を刺激する曲を探してたら、結果として「一般的にプログレッシヴ・ロックと呼ばれるもの」のなかにそういうものが多かったってだけ。なので自分の場合、プログレッシヴ・ロックのファンというわけじゃないんです。だから、プログレッシヴ・ロックだから「いい」とは思わないんだろうな。
要するに、確率と傾向の問題です。世の人が「プログレッシヴ・ロック」と呼ぶ音楽群は、曲づくりの傾向として、自分の好きなタイプのものが少なくない。でも、すべてがその傾向というわけじゃない。とはいえ、他の名称で呼ばれる音楽群を探すより、プログレッシヴ・ロックと呼ばれる音楽群のなかで探したほうが、その傾向に出会う確率がいくらか高い。たんにそういうことだったんです。
自分にとっては、「プログレスすること」「プログレッシヴであること」は、実はあまり重要ではない、ということに気づいたのは、ずいぶん前のこと。もっと単純に、歌メロも演奏も構成もその他全部含めて「体中に染み渡る、感情を揺さぶる美しい音楽」が聴きたかったのだと。いまから思えば、そういう音楽をはじめて見つけたのがPink Floydで、彼らの音楽が「プログレッシヴ・ロック」と呼ばれていたからたくさんのプログレッシヴ・ロックのアルバムを聴いただけ。そのうち、プログレッシヴ・ロックのなかでも「イタリアン・ロック」と呼ばれるものに好きなタイプの曲が多いという傾向に気づき、以降は自分は主にイタリアン・プログレッシヴ・ロックのファンなのだと思っていたのだけど、実は自分をひきつけているのは“プログレッシヴ”の部分ではなく“イタリアン”の部分だということに気づき、その後は基本的に自分はイタリアン・ポップス/ロックのファン、と思ってきたわけです。
イタリアは大好きな国で、ポピュラー・ミュージックだけでなく、言葉の響きも、食べ物も、飲み物も、風景も、どれも自分の好みです。なので、自分がイタリア・ファンであることはおそらく間違いない。
だけど最近、イタリアン・ポップスが、それほど自分をひきつけなくなってきてるんですよ。体中に染み渡る音楽が、イタリアのもののなかにだんだん見つけられなくなってきている。
世界中のさまざまな国でさまざまなアーティストがさまざまな音楽を奏でてる。それらすべてをチェックして、そのなかから好きな音楽を探すのはたいへんです。だから、おおよその傾向を把握して、より高い確率で好きなものに出会えるジャンルとして、長い間自分はイタリアン・ポップスを中心に聴いてきました。でも最近、その確率がどんどん下がってる。傾向が変わってる。イタリア語の響きは好きなのだけどなぁ。
困ったなぁ。こういった傾向はイタリアだけでなく、全世界的なものなのだろうか。ずっとイタリアしかチェックしてなかったので、他の国の傾向がぜんぜんわかりません。
あぁ、はじめてPink Floydに出会ったときのような感動を、若いころのClaudio Baglioni(ウラウディオ・バッリォーニ)に触れたときのときめきを、Alessandro Errico(アレッサンドロ・エッリコ)やORO(オーロ)が惜しげもなく提供していたドラマティックなポップスを、自分はどこで探したらいいのだろう。最近のイタリアには、あまり期待できない気がするのだけど。
| 固定リンク
« おじいちゃん化進行中 | トップページ | クイール »
「音楽」カテゴリの記事
- 「every little music in my life」最近の更新(2023.08.06)
- Matia Bazar / The Best Of (2022)(2022.11.27)
- Umberto Tozzi / Io Camminero(2022.07.24)
- Spectrum / Spectrum 6; SPECTRUM FINAL Budoukan Live Sept. 22,1981 (1981)(2022.05.22)
- RockFour / One Fantastic Day (2001)(2022.05.22)
コメント
もあさん、こんにちは。私も、いろいろ聴いていた中で、結果的にプログレ、特にヨーロッパ(中でもイタリア)ものに惹かれたという点で似てますね。私の好みはクリムゾンの系統でしたけれど。
実は、連休中実家に帰っていたのですが、学生時代のLPはすべて実家に置いてあって、どんなものを聴いていたのか、ちょっと見てきました。貧乏な学生のことですから数はたくさん持っていませんが、我ながら凄まじいプログレコレクションに苦笑しました(笑)。(こんなものばっかり聴いてた女の子はきっと少なかったと思う(笑)。)
今現在、かつてのプログレサウンドを探そうとはあまり思わないのですが、クラシックの中に「プログレ」を見つけるのは好きです(笑)。やはりプログレにはクラシックの要素や影響かなり含まれていると思いますし、ミュージシャン自身もクラシックの勉強をしていた人は多いと思いますが。
そうですね、今のところ、これはプログレ!と認定しているクラシックは、ショパンの「ピアノソナタ第2番」、第3楽章が葬送行進曲のです。そう、あの世界で一番有名なフレーズの(爆)。私、ショパンをあまり知らない頃、どうしてこんなに暗いフレーズを書くんだろうと、まったく興味もなかったのですが、初めてピアノソナタとして聴いた時、これはプログレだ~!と感動のあまり自分も昇天しそうになりました(笑)。それ以来、ショパンファン。それから、オペラの作曲家ヴェルディの「レクイエム」もまさにプログレ。よくテレビ番組のバックでも流れるので、誰でも知っていると思います。ボチェッリも歌ってます!これはまじ、ぶっとんでます。あとは、オルフの「カルミナ・ブラーナ」とかね。これはロックコンサートでもよく使われる、って聞きますが・・・。
クラシックの中にも凄まじいものがたくさんあるので(笑)、今はそんなものを見つけるのが趣味です。
投稿: Motoko | 2005/03/22 15:30
私もずっとプログレ・ファン、でもすぐにラジオで耳にする事も無くなって、ニューウェイブを聴きつつ、細々とプログレを聴いてきました。ラジオで耳にしないとどのバンドを聴けば良いか分からず途方に暮れていた時期もありました。
プログレは許容量が広く、カテゴライズされないロックはみんなプログレとされているような気がします。だから何でもあり。
その中で好きなのは今も変わらず、シンフォニック・ロック。これぞプログレだぁ~と感激。YESは変わらず好きです、先日ライブ映像を見て再確認しました。King Crimsonも好きですけどね。
Dream Theater、It BitesそしてRush、Fish在籍時のMarillionの良さはまだ分かりません。
投稿: hello nico | 2005/03/23 00:04
基本的に自分は「メロディ&ドラマティック・アレンジ」ファンなのかなと思う今日この頃です。そのむかし、ポピュラー・ミュージックのなかであそこまで優雅で魅惑的なメロディ(歌メロだけでなく、対旋律やバッキングその他すべて含む)が総動員され、ドラマティックなアレンジがされてたものって、プログレッシヴ・ロックくらいしかなかったしね。
その意味では、クラシックも当然、範疇に入るはずなのだけど、実際、嫌いではないのだけど、あまり積極的に聴かないのは、クラシックにはドラムとベースとエレキギター、そしてパッショネイトなヴォーカルが入ってないから(笑)。たとえば「ツァラトゥストラ」に、たとえば「惑星」に、たとえば「皇帝」に、ハード・ドライヴィンなギターと地を這うようなエレキ・ベース、内臓を直撃するバス・ドラムと躍動感のあるスネアにタムタムのロールなどが入っていたら、どれだけかっこいいか! そこに素晴らしい声のヴォーカルがかぶったらどれだけいいか!! と思ってしまいます。
ちなみにまだ中学生の、洋楽といえば普通のロックとポップスしか知らず、KISSの大ファンだった、当然プログレッシヴ・ロックなんてものがあることも知らなかったころ、ディストーションかけたエレキで「ハンガリア舞曲」とか毎日弾いてまして、クラシックをロックで演奏したらぜったいカッコイイに違いない、そんなこと考えついたやつなんてきっとほかにいないぞ、オレってすげぇ!とか思ってた阿呆な小僧は自分です。それを考えると、プログレに出会う前からプログレ・ファンになる素養はあったのだろうなぁ。
「カルミナ・ブラーナ」はOzzy Osbourne(へヴィメタルの人ね)がよくライブのオープニングSEでかけてました。Pretty Maidsかなにかのアルバムにも収録されてたはず。
投稿: もあ | 2005/03/23 13:02