PAOLO VALLESI
1991年リリースの、Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)のデビュー・アルバムです。
思えば、このころのSugarレーベルは自分の好みど真ん中なアーティスト/アルバムがたくさんありました。デビューしたてのAndrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)、Onde Radio Ovest(オンデ・ラディオ・オヴェスト。ORO)、Alessandro Errico(アレッサンドロ・エッリコ)... 豊かな哀愁を持っているけれど、哀愁だけに流されない、甘く美しいメロディを持っているけれど、べたべたと甘くはならない、ほどよくスピード感があったりハードだったりして、とてもドラマティック... まさに自分のツボなんです。
そしてPaolo Vallesiも、そんなSugarレーベルの魅力を充分にたたえたカンタウトーレ。哀愁のあるひび割れ声と美しいメロディ。Marco Masini(マルコ・マジーニ)の暑苦しさとしつこさとくどさを薄めたようなPaoloの歌声と曲調が楽しめます。ミディアム・テンポの曲が中心で、美しいメロディとやわらかな哀愁が心地よく響きます。
デビュー・アルバムということでか、たとえば次作のアルバム・タイトル曲である「Forza della vita」のような印象的な曲がないこと、メロディに少し伸びやかさや素直さが不足している感じがすることなど、成長途上にある作品という印象はあります。収録されている曲はどれも及第点ではあるけれど、飛びぬけたものがないし、スローなバラードや軽やかでリズミックな曲には彼の魅力をうまく溶け込ませられていないといった感じもあります。
だけど、それらを補って余りある「可能性」を感じられること、次作以降に「期待」が持てること。これって、新人のデビュー・アルバムを聴く楽しみだったりしますよね。そしてPaoloはきちんとその期待に応え、このあと良作を何枚かリリースし、日本のイタリアン・ポップス・ファンのあいだでも人気のカンタウトーレとなっていったんです。
そんなPaoloの若かりし日の姿がここにあります。多少未熟だけど、これからが楽しみな若者のアルバム。そういう作品って、自分はけっこう好きなんです。
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