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2005/02/25

がんばれ!イデアル

本格的なフレンチを、きちんとしたサービスで、しかも手ごろな価格でランチに食べられ、思いっきりお気に入りのビストロ・イデアル(神楽坂)が、経営者の方針変更により今週からはランチがパスタのみになってしまいました。

めちゃめちゃ哀しいことですが、あの席数(14席だったか)で満席率が60~70%程度、客単価が1600円(いちばん安いコース)~2000円程度で、あの様子だと2時間のランチ時間での客席回転率は1.5くらいだろうから、多めに見積もってもランチの売上げが3万円程度。それでキッチン2人とホール2人では、たしかに経営的に苦しい部分はあるだろうな。

その辺の事情は、自分もまがりなりにもレストラン出身ですから、想像はできます。なので、よりカジュアルな料理を提供(客単価をさげて、提供時間を早くして、客席回転率を上げる)という方向を試してみるのも、悪くはないでしょう。

ちなみにイデアルのウェブサイトには「サービス形態変更のお知らせ」がありまして、そこには、お客からヒアリングした結果見つかった改善点のうちの最重要課題として、

1.気軽さが足りない(無い)
2.料理の提供時間が長い
3.ディナーの閉店時間が早い(現在21:30)
4.ワインの品揃えが偏っている
5.客席が少ない

があげられています。ランチで問題になるのはこのうちの1,2,5ですが、1,2に対する具体的な対策として、

1.ラフでフレンドリーなサービスと親しみやすいお店作りに
2.前菜、主菜などコースでお一人お一人に順番にお出しするのではなくワイン バーのように一皿を皆様でシェアしながら召し上がって頂き、出来上がったお料理の順にお出しするスタイル。

を宣言。そして、

> ランチタイムは2月21(月)よりパスタをメインにしたランチメニューに変更

という営業方針を打ち出したわけです。

ラフでフレンドリーなサービスはいいでしょう。できた順に料理を出してみんなでシェアというのもいいでしょう。でも、パスタをメインにしたランチっていう考えは、いったいどこから出てきたんだろう? 「サービス形態変更のお知らせ」のところには、

> 当初考えておりました「気軽に本格的なフレンチを」を更に進めるためにサービス形態を変更

と書いてあるのだけど、パスタって「本格的なフレンチ」じゃないじゃん。

それでも、これまでたくさんの美味しい料理を食べさせてもらったし、ホールのスタッフさんから気持ちのいいサービスをたくさん受けてきた自分です。ランチがパスタになったからってイデアルを見捨てたりはしません。ということで、食べてきましたさ、パスタランチ。

哀しい。

メニューはパスタ2種類からどちらかを選ぶだけ(昨日はボロネーゼかイカとアンチョビのパスタ)。サラダ、デザート、ドリンクつきで998円。料金的にはこのあたりの相場でしょう。

しかし、です。

美味しくないのです。麺そのものが。味付けがどうのというのではなく、パスタの麺自体の茹で方、扱い方が、うまくないのです。

乾麺を使っていることはいいにしても、麺が5~6本くっついて硬い束になっているようなものを出しちゃだめです。また、あんなに水分の少ないパサついたパスタ麺をレストランで食べたのはひさしぶり。茹でたあとの調理時の茹で汁の加え加減がうまくいってないのでしょう。そして、あれほど繊細で素材の旨みを上手に活かした料理を出してくれていた店なのに、やたらと油っぽく塩気やペッパーの辛さが雑で大雑把な味付け。

申し訳ないけれど、バリラの乾麺を使って家で自分でつくったほうが数倍美味しいです。ジョナサンで食べたほうがよっぽど美味しいです。

突然のランチの業態変更は、常連のお客にとってもびっくりだったけど(昨日も知らずに来店した常連さんにメートルのO氏が頭を下げてた)、現場のスタッフさんにとっても突然だったようです。どう考えても、あの店のあの狭い厨房に、パスタランチでお客をがんがん回転させる調理設備が整ってるとは思えない。くっつき束麺みたいな初歩的な「だめ料理」が出てしまうのは、小さな鍋で麺を茹でるからでしょう。

パスタをメイン商品として飲食店で提供するには、それなりの設備(とくに「茹で」のための)が必要です。フレンチをつくる道具をなんとなく使いまわしてどうにかできるものじゃないはず。また、これだけイタリアン・レストラン、パスタ屋さんがあちこちにあるいま(神楽坂にもたくさんある)、美味しい麺にこだわるのは当然だし、そこそこの味ではお客はついてこないのですよ。

本当のところはどうかわかりませんが、なんとなく、経営者が、「気軽な料理? パスタだったら気軽じゃん。それにつくるの簡単だし」と、パスタを軽く考えて現場にやらせちゃったんじゃないか、という感じがしてしかたがありません。突然の業態変更で、キッチン側の「きちんと美味しいパスタ」をつくるための準備(設備や調理技術その他含めて)が整わないままに見切り発車させられてしまったような、そんな気が(現場は現場で新しい状況に対して精一杯がんばっているのは見えます。でも、ちょっとモチベーションは下がってるかも)。

あそこのキッチンなら、もっと美味しいパスタがつくれるはずなんです。でも、いまのままじゃすぐに常連は昼に来なくなること請け合い。かといって新しいお客がつくとも思えない。常連さんと思われる年配の女性のお客さんが出されたパスタを大量に残して帰っていったのを見ても明らかに、お客の期待を下回った料理を、いまは提供しているのです。

がんばれ!イデアル。この3~4週間が勝負です。いまは業態変更したばかりでいろいろな準備が整っていない・なれていないからしかたがないかとやさしく見守る古くからの常連も、1ヵ月後に再度様子を見に来て、やはりきちんとしたパスタが提供されていないようであれば、少なくともランチは見限ります。なので、この3~4週間で確実にうまいパスタを提供できるようになってもらわなければ。

自分ももう少し見守ります。しばらくは毎週食べにいってやる。せめてカロセッロ(イデアルから遠くないところにあるイタリアンのお店)くらい美味しいパスタを出せるようになってくれ。

しかし、フレンチでは気軽さが足りないからパスタ、という思考方法は、あまりにも短絡的だし、やっぱりパスタをなめてる感じだなぁ。

たとえばイタリアンでもコースでは気軽さが足りないということで、アンティ・パストとプリモとセコンドを一皿に盛り付けるワンプレートランチを考えた人がいて、いまはそれを導入する「本格的なイタリアンを気軽に食べさせるイタリアン・レストラン」が増えてきています。同様のことをフレンチではできないんだろうか。コースとしてのサービスで提供時間(=客席滞在時間)が延びてしまうのが困るのであれば、短い時間で楽しめる「提供のしかた」を考えるほうが本筋にあってるんじゃないだろうか。

せっかく「美味しいフレンチ」が売りのお店だったのだから、それをいかにもっと気軽に、楽しく、短い時間で提供できるようにするかを考えてほしかったなぁ。あくまでも「フレンチ」というお店のアイデンティティを守ってほしかった。だってビストロ・イデアルは、シェフも、メートルも、ギャルソニエール(でいいの? 女性のギャルソン)も、フレンチを提供するときにもっともその能力を輝かせる人たちのように思えるのだもの。

がんばれ!“ビストロ”イデアル

ちなみに、まだ始まったばかりでわからないけど、おそらく今回のランチ業態変更は失敗に終わるのではないかと自分は思います。そしてそう遠くないうちに、フレンチに戻すのではないか。あるいは、ランチをやめて夜だけオープンという選択肢もありそうだな。

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