わすれられないKISS
はじめてのKISS体験は、たしか11歳のころだった。
団地に住む友人の、あまり光の入らない薄暗く狭い部屋だったな。
その前まで、なにをしていたのかは覚えていない。
当時の自分は、多少ませていたとはいえ、まだ幼い少年。
そして、突然のKISS。
からだの底から、心の奥から、しびれた。
それまでに知らなかった甘美。
はじめて感じる躍動。
それからの自分は毎日、むさぼるようにKISSを求めた。
世の中に、こんなにすばらしいものがほかにあるものか。
脳とからだの両方をかき乱す快感。
まるでからだの中を縦横無尽に動き回るような感触。
KISSさえあれば、ほかはいらないと思った。
でも、それもいまは遠いむかし。
高校生となり、大学生となり、社会人となった自分は、
KISS以外にもすばらしい快感をもたらしてくれるものが、
ほかにもいろいろとあることを知った。
そしてKISSの喜びは、
少しずつ記憶の奥底にしまわれていった。
しかしいま、ひさしぶりのKISSに心が震えている。
記憶の底に沈められていたけれど、
それは忘れ去られたわけではない。
はじめてのKISSの感動は、
からだの奥に染み付いて、
心の奥に住み着いて、
いつまでも生きている。
わすれられないKISS。
そしていま、あらためてわかった。
自分はKISSを基準にしている。
KISSが自分の「好き」の中心になっている。
キャッチーさが足りない音楽に親しみを感じないのは、
しかしキャッチーなだけの音楽にも魅力を感じないのは、
キャッチーかつ骨のあるロックがKISSは得意だったから。
単純なギターリフに退屈してしまうのは、
KISSがギターリフのアイデアにたけていたから。
ルートを弾いてリズムを取る役割しか持たないベースにうんざりしてしまうのは、
リズムを取りつつコードを分解してフィルイン的効果もはさむKISSのベース・ラインになじんでいたから。
そして自分は、そんなKISSの音楽が大好きだったから。
キャッチーでドラマティックでハードでポップ。
シンプルでストレートだけどひと手間かかったアレンジ。
このバランス感覚が自分のなかで、ひとつの「ロックの基準」となっている。
その後の人生の大半を占めるプログレッシヴ・ロックにおいても、
KISS的なバランスと動き回るベースを期待していた自分に気づく。
今朝、ひさしぶりに電車のなかで『Love Gun』を聴いていて、
自分の原点はここにあったんだなぁと、あらためて思ったのでした。
以上、わすれられない(アメリカン・ロック・グループ)KISSについてのお話でした。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 「every little music in my life」最近の更新(2023.08.06)
- Matia Bazar / The Best Of (2022)(2022.11.27)
- Umberto Tozzi / Io Camminero(2022.07.24)
- Spectrum / Spectrum 6; SPECTRUM FINAL Budoukan Live Sept. 22,1981 (1981)(2022.05.22)
- RockFour / One Fantastic Day (2001)(2022.05.22)
コメント
こんにちは、キッスネタとあってはコメントせずにはいられません。
私も去年久しぶりにカバーバンドを再開して、自分の原点を再認識しています。
ここ何年もプログレ関係しか演奏してなかったので、改めてキッス演奏してみると体から湧き上がってくるものを感じました。
キッスの音楽の凄さは既にもあさんが語られていますのでもう何も言うことはないですが、もう一つ彼等が凄いことは、完璧なプロフェッショナルだということですね。ファンを喜ばせるライブをやっている、プロ中のプロだということです。
偉大なバンドです。
投稿: francofrehley | 2005/02/03 10:54
もあさん、こんにちは。意図的に?(笑)お書きになったのでしょうか、マジなお話かと、ちょっとドキドキしながら読んでいました(笑)。"KISS"ですね。私の場合、キッスやエアロじゃなくて(もちろんよく耳にしていましたが)、クイーンに行っちゃいましたね(笑)。フレディーの声は素晴らしかったです。(いろんな意味で(笑))歴史に残るロックヴォーカリストだと思っています。
私はだいたいブリティッシュロック派だったんですが、もあさんのように初めての体験をたどってみると、洋楽の入り口はカーペンターズだったんですね。6年生でした。お友達のお姉さんが聞いていて、教えてもらいました。
ちょうど今日、たまたま手に入ったカーペンターズのドキュメンタリー番組を見ていたところなんです。ずっと聞いていなかったんですけど。カレンの声を聞くと切なくなるから、ほとんど封印状態でした。次々と出てくる、見たこともなかったビデオクリップ。でも、どのヒット曲も、12歳ぐらいの頃の耳コピで全部歌えるんですね。(今思うと、英語ぐちゃぐちゃ。でもそれなりに歌える(笑)。)当時は、レコードが擦り切れて、ノイズだらけになるまで夢中で聞いていました。カレンの声も、カーペンターズの音楽も、改めて素晴らしいです!
全然脱線ですみません。でも、私も、自分の音楽人生のルーツを振り返っていたところだったので、書かせていただきました。
投稿: Motoko | 2005/02/03 23:11
あちゃ〜、家で書き込みしたら2回とも文字化けしてしまった。
なんで〜???
もあさん、上の2件は削除してください。
私の洋楽原体験はABBAだったと思います。友達のお姉さんがいっぱいレコードを持っていて、「いい曲かり歌うグループだな」と当時小学生だった私は思いました。
投稿: marikzio | 2005/02/04 08:35
書き方、あざとかったでしょうか。勘違いによるアクセスアップを狙ってみました(笑)。
ABBAもQueenもいいグループですよね。カーペンターズも。いま聴いてもやっぱり魅力的な音楽をたくさんつくってくれました。
むかしの洋楽って、圧倒的に「メロディ」にあふれてたからですよね。日本のポップスとはくらべものにならないくらい。日本人が日本語でうたってて「あ、いいメロディを持った曲」と思ったもののほとんどは洋楽のカバーだったりして。
KISSは、小学生のときの友人(同級生)のお兄さん(暴走族。笑)が好きで、LPを持ってたんです(彼はエレキギターも持ってた)。それを友人と一緒に聴いたわけで、これが「ロック」初体験(その前にビートルズは少し聴いたことがありましたが、あれは「ロック」とは感じなかった)。
そしていま、はじめての「ロック」がKISSでよかったと、本当に思ってます。彼らの「ロック」がすばらしかったから、「ロック」「洋楽」に興味を持ち、彼らを出発点に、さまざまな洋楽を聴くようになり、いまのプログレッシヴ・ロックやイタリアン・ポップスへが好きな自分へとつながったのですから。
どんなことでも「最初」って大切なんですよね。
投稿: もあ | 2005/02/04 08:55
何の事かと思いました。「むさぼるように~」の所からアレ?
友達がベイ・シティ・ローラーズに夢中なのをよそ目に、私はKiss聴いてました「Love Gun」とタイトル見るだけで曲が頭に浮かびます。しかし、私もQueenに行ってしまいました。
あの頃のハード・ロック(Kissはヘヴィ・メタ扱いでしたが)は解かりやすくて良かったです。最近Rainbow、Foreignerを聴いてそう思いました。
投稿: hello nico | 2005/02/05 00:26
ほんとに当時は、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ・・・国を問わず、素敵なメロディーに溢れていました。(なぜか日本だけ、印象がないが・・・(笑))
ラジオでヒットチャートを聞くのが楽しみで、新しい曲やアーティストが上がってくるたび、ますます自分の世界が広がり、洋楽にのめりこんでいったのでした。
ティーンエイジャーの頃の体験が、ずうーっと今につながっているんですよね。いい音楽がたくさん聞けて、幸せだったと思います。
それにひきかえ、今の音楽は・・・(笑)。うち、そういう年頃の子供がおりますが、今聞かせてやりたい、とか、一緒に楽しもう、という音楽が、なかなか見つからないですから。自分には素晴らしい音楽との出会いがあったから、そういう胸が躍るようなワクワクする感覚を経験させてやりたいと思うんですけどね。
子供たちからは、外国の変な中年のオジサンばかり追いかけてる変態ママ(爆)としか思われていません。
投稿: Motoko | 2005/02/05 10:26