ANTONIO DECIMO / LA DOMENICA DELLE PALME
Amedeo Minghi(アメデオ・ミンギ)のアルバムでときどき名前を見かけるAntonio Decimo(アントニオ・デーチモ)のアルバム。すべての曲を自分で作詞作曲(一部に協作あり)しています。プロデュースとディレクションをAmedeoがしていることもあり、Amedeoのコアなファンのあいだではちょっとだけ知られているようではありますが、一般的にはまったく無名といっていいのでしょう、きっと。
この人、いい声だな。クリーンで、あたたかみがあって、ちょっとセクシーで。カンタウトーレというよりも、ミュージカル・シンガーを思わせるような歌い方(ってどんなだ?)。裏ジャケットには色鉛筆のようなタッチで海に近い古いイタリアの小さな町の広場の絵が描かれているのですが、これもまたやさしげでいい感じです。
ただ残念なのは、曲自体にあまり魅力がないこと。決して悪くないのだけど、たとえばサビだけでももっと印象的なメロディがあればなあと思います。全体に標準はクリアしているけれど、どこも標準のままで終わってしまった印象です。ところどころに飛びぬけたところがあれば、もっと魅力的になると思うんですけどね。
Amedeoがプロデュースはしていますが、アレンジはMichele Santoro(ミケーレ・サントロ)という人が担当していることもあってか、アルバムのなかにあまりAmedeoぽさはありません。ギターを中心とした演奏アレンジがされていますが、もしこれがAmedeoアレンジでキーボード中心になってたら、また違った魅力が出たかも。
Antonioは、歌声はとても魅力的なのだけど、彼のつくる曲に「Antonioらしい個性」のようなものがあまり感じられないのが残念です。曲によってほんのりAmedeo風だったり、ナポリ風だったり、Mango(マンゴ)風だったりして、それらのどれも悪くはないのだけど、借り物っぽいんですよ。「L'inverno non e' qui」ではAmedeoがヴォーカルで参加しているのですが、Amedeoがうたいだしたとたんにその曲のすべてがAmedeoの世界に変わってしまう。歌い手が変わっただけで曲自体の印象がすぐ変わってしまうというのは、カンタウトーレのつくる曲としてはちょっとつらいです。かといって、Amedeoがつくった曲をAntonioが歌ったらすぐにAntonioの世界に変わってしまうかというと、そこまでの個性はAntonioのヴォーカルにはないかなぁ。いい声なのだけど、あまりクセがなくてどんな曲にもそれなりにマッチしてしまう感じがするところが、ミュージカル・シンガー風な印象を受ける所以なのかもしれません。
Antonio Decimo名義のアルバムっておそらく、この1枚だけじゃないかと思います。それなりにイタリアの愛らしさが感じられるかわいらしいアルバムなのですが、やはり自分などのような一部のコアなイタリアン・ポップス・ファンが聴けばそれでいい作品でしょうね。強い魅力は感じないけど、でもなんかむげにはできない。それはそれで素敵だといえるな。
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