MICHELE ZARRILLO / COME UOMO TRA GLI UOMINI
奇蹟の?来日公演 at 東京厚生年金会館からもう6年が経つんですねぇ。せっかくの初来日、せっかくの厚生年金会館という大きなステージにもかかわらず、けっきょく日本盤CDが1枚もリリースされなかったMichele Zarrillo(ミケーレ・ザリッロ)は、なんだかかわいそうです。本国ではトップ・シンガーのひとりだし、日本でもイタリアン・ポップス・ファンのあいだでは人気が高いんですけどねぇ。
とはいえ個人的には、彼への評価はいつも「おしい! あと少し」って感じなんです。来日のときのステージもそうだったし、今回このアルバムを聴いてもやっぱり「おしいなぁ」満載って感じです。
Micheleって、すごくいい要素をいっぱい持ってると思うんですよ。ほどよくひび割れていて味のある甘い声。美しいメロディを書ける才能。ロマンティックなものもポップなものもつくってうたえるバランス感覚。これらを巧みに操って、とても耳あたりのいい、しなやかで軽やかなイタリアン・ポップスを聴かせてくれます。
ただね、こういった「いい要素」のどれもが高い水準にはあるけど、突き抜けたものがないんですよ。「いい要素」同士がバランスを取り合ってしまっているの。そのため、インパクトに欠けてしまうんだよなぁ。これぞMichele!ってものを感じにくい。
たとえば、声。これが、もっとすごいだみ声だったら、あるいはもっとクリーン・トーンだったらどうだったろう。楽曲やメロディはこのままで、だけど声だけがもっとめちゃめちゃ個性的だったら。
あるいは、楽曲。彼の書くメロディはきれいだけど、楽曲として聴いた場合、じつはあまり展開がなくて平凡だと思います。これを、せっかくの美しいメロディを駆使してたたみかけるように展開するとか、うんざりするほど美しいメロディを連発するとか、構成面かメロディ面での個性を追求するとか。
なんでもいいのですが、なにかひとつ、突き抜けた要素、ときに全体のバランスを壊すくらいの圧倒的な特徴や個性といったものを、自分は期待しちゃうんです。
その点、Micheleの音楽って、どうも優等生的なんですよね。すべての教科でどれも高得点(だけどひとつも学年トップはない)みたいな。会社員でいえばゼネラリスト? あらゆる要素でハイレベルにあるというのは、それはそれで素晴らしいのだけど、自分はそれよりも職人的というか、ある部分に飛びぬけたものがあれば他の部分は平均点プラスαくらいでOKな感じのアーティストが好きなんです。
Michele Zarrillo、いいシンガーだとは思うけど、聴きやすいいい曲も多いと思うけど、もうひとつ心をガッチリつかむなにかがほしい、その点が「おしい!」といつも感じてしまうカンタウトーレなんだよな。
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コメント
以前にもあさんのサイトで、彼のコンサートに行きました!というのを読み、びっくりしていました。本当に奇跡的な出来事ですね。
NHKのイタ語会話で、彼の曲「L'amore vuloe amore」が紹介されていたのを覚えているのですが、その頃がちょうど来日してた時だったのかなぁと思ったりしました。
イタリア・フェスティバルの入場料だけで観られるガット・パンチェーリの"12畳コンサート"も、今後伝説になるかもしれませんね。私はその伝説の生き証人になりたいと思います。(^_^;)
投稿: あんき〜お | 2005/01/10 16:34