ALUSA FALLAX / INTORNO ALLA MIA CATTIVA EDUCAZIONE
ひと言でいってしまうと、小粒だな。13の小曲を継ぎ目なくつなぎあわせることでアルバム1枚を形成するという手法なので、大きなうねりとかダイナミックな展開とかは出しにくい点もあるのでしょうが、自分の好みからすると、もう少し「おぉっ!」と思わせるような強引さのようなものが欲しかったです。
それと、聴き終わったあとにいつまでも耳に残っているような印象的なフレーズやリフレイン。これも欲しかったな。アルバム全体の構成とかが複雑で把握不能なような高度な?プログレッシヴ・ロックでも、名作・傑作と呼ばれる作品には必ず印象的なフレーズやリフレインがあって、はじめて聴いてもその部分が妙に耳に残っちゃったりするもんだと思うんですよ。自分の好みの問題なのかもしれませんが、そういったフレーズやリフレインがあるかどうかって、アルバムを評価するときの基準のひとつになっちゃいます。
そういった弱点はあるのですが、だからといってAlusa Fallax(アルーザ・ファラックス)のこのアルバムが聴くべきところのない平凡な作品かというと、そうではないところがプログレッシヴ・ロックの楽しいところ。いろいろ力不足なりに一生懸命に頑張ってるところが愛らしいんです。
フルートを中心に、各種管楽器がけっこう大きく導入されているのがひとつの特徴といえるでしょう。でも、このフルートが、なんだか肺活量が少なそうで、聴いててはらはらしちゃいます。それが幻想的かつはかなげな雰囲気を出すのに役立ってはいるのですが。ちなみにフルートの入るパートではスペインのGotic(ゴティック)とか思い出しちゃいました。
そのほかの管楽器、サックスや、ホルン?とかは力強く鳴っています。サックスの入るパートではOsanna(オザンナ)など、濃ゆいイタリアの血を感じます。
問題は、キーボード。ピアノやチェンバロなどでアルペジオやメロディを弾くときはまぁいいのですが、キーボードによるオーケストレーションのアレンジが、とても平凡。単純にコードを白玉で鳴らしただけみたいな部分が多く、もう少しひねりましょうよという印象を受けてしまいます。演奏技術的にもあまりうまくない感じです、ここのキーボーディスト。
ギターは普通かな。比較的クリーンな音を使うことが多く、フルートやピアノなどとの絡みでやわらかな哀愁を表現します。サックスの入るようなハードなパートではきちんと激しい演奏もできます。じつはこのグループの演奏は、このギターとフルートで支えているような気がします。
そして、やはり魅力的なのはヴォーカル。ざらざらとした声質で、あるときはやさしく、そしてときに情熱的に、力強く歌い上げています。いかにも1970年代のイタリアン・プログレッシヴらしい、豊かな声量と表現力を持ったヴォーカルです。むかしはこういうヴォーカリストがイタリアにはいっぱいいたんですが、最近は減ってきてしまいましたね。
全体に小粒だし、せっかくのパワフル・ヴォーカルやヘヴィなサックス&ギターとリリカルなフルート&ギターのアルペジオを上手に対比させぶつけ合うような瞬発力の不足、印象的なメロディ&リフレインの不足といった弱点はあるのだけど、つむぎあわされた小曲のなかに小さな「イタリアン・プログレッシヴの魅力」のかけらがたくさんちりばめられていて、それらを探し拾い集めるのはなかなか楽しいです。また、大きなうねりはないけれど、曲の並べ方、アルバム全体の構成は、けっして悪くはありません。ここになにかコアになる曲やフレーズがあれば、もっと締まった感じになったのだろうなとは思いますけどね。
そういう点で、ある程度多くの1970年代イタリアン・プログレッシヴを聴いてきた人に愛される、そういう人が楽しめる作品だと思います。逆にいえば、イタリアン・プログレッシヴの初心者や、1970年代のイタリアン・プログレッシヴにあまり興味がない人には、あまりすすめにくいというか、先にもっと聴くべきアルバムがあるはずだと感じます。
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