EVITAR BANAI / TRIP SONG
イスラエルのシンガー・ソングライター。アーティスト名とアルバム・タイトルにはかろうじて英語表記があるのですが、それ以外は全部イスラエル語?で表記されているため、ぜんぜん読めません。
このアルバムは、おそらくセカンド・アルバム。某ショップでは彼のことを「イスラエルのMauro Pelosi(マウロ・ペロシ)」といった紹介をしていますが、それはどうかなぁ。たしかにファースト・アルバムは陰鬱なヴォーカルに哀しげでさびしげなピアノとストリングスがかぶさる感じがなんとなくMauro風ではありましたが、このセカンド・アルバムでは、Mauro風なイメージはほとんどないといっていいんじゃないでしょうか。
『Trip song』というアルバム・タイトルからもわかるように、かなりサイケデリックを意識したつくりになっています。Evitar Banai(エヴィタール・バナイ)のヴォーカルは浮遊感があって、Claudio Rocchi(クラウディオ・ロッキ)やAlan Sorrenti(アラン・ソッレンティ)などに通じるところもあり、ある意味ヴォーカルだけで充分サイケデリック風味なのですが、ClaudioやAlanにくらべると、歌声の持つ力と密度が小さい。なのに、バックの演奏は派手なサイケデリック風をめざしているため、ヴォーカルとバックのバランスが非常に悪くなっていると思います。
とくに、過剰にデジタリックな処理をされた派手なリズムや、無駄に雰囲気をあおるシンセサイザーのアレンジはいただけません。ピアノやウッド・ベースなどのアコースティックな楽器との対比でサイケな感じを強調しようという意図なのかもしれませんが、あまりにもバランスが悪い。不協和・不調和による調和とは程遠い位置にあると感じます。そのうえ、曲、歌メロ自体が持つ魅力・存在感もファースト・アルバムより少なくなっているため、いっそうぼやけた印象になってしまいます。
イスラエルの言葉には、フランス語のRの発音をさらに強調し汚くしたような「ふがっ」といった音があるようで、前作ではそれがとても気になりました。前作は、曲もアレンジもロマンティックでシャンソン風なところが多く、そのなかに出てくる「ふがっ」はあまりにそぐわなかったからです。でも今作では、この「ふがっ」があまり気になりません。この音自体があまり出てこない感じがしますし、出てきたところで、バックの演奏がそれ以上に汚い音なので、それほど違和感がないのでしょう。
以上、あくまでも私的な感想ですが、正直にいってがっかりな出来。せっかく個性的で魅力的な歌声を持っているのですから、その声を生かすメロディとアレンジを聴きたかった。もっとシンプルでストレートなアレンジのほうが、彼の歌が生きると思います。
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