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2004/07/07

THERION / LEMURIA

前作『Secret of the Runes』でドロマティック・オーケストラル・クワイア・メタルの頂点を極めたTherion(セリオン)の、待望の新作は、それぞれ『Lemuria』『Sirius B』と名づけられた2枚のアルバムが1つのパッケージに収められた2枚組みとなりました。今日は、そのうちの『Lemuria』のほうの雑感を。

『Sirius B』でも感じられたのですが、Therionは、傑作となった『Secret of the Runes』の次に進む方向として、この路線をさらに高い次元にまで持っていくことをめざすのではなく、原点回帰というか、初期のころの自分たちが持っていたアイデンティティをもう一度確認することを選んだのかなという気がします。

このアルバムでも、男声・女声を巧みに使ったクワイアは健在です。でも、その密度は下がってきているように感じます。また、ひさしく聴いていなかったデス声(ヴォォォォォ~とかいうヴォーカル)がこのアルバムでは一部導入され、彼らがもともとはデス・メタル・グループであったことを思い出させますし、さらにはちょっとハイ・トーンめのシャウト・ヴォーカルもあり、ヘヴィ・メタル・グループであることも主張しています。

オーケストラは使われていますが、『Secret of the Runes』のようにクワイアとともに全編に響き渡るということはなく、要所要所で顔を出すといった感じになっていて、楽曲およびアルバムのなかにおける重要度・貢献度は下がっています。また、オーケストラを使う曲とそうでない曲に明確な差が出てきていて、ヘヴィ・ロックとクワイア入りオーケストラの融合をより高い完成度で実現させるスタイルを追求してきた前作までの試みが、このアルバムではあまり重視されていないように感じます。ロック・グループとオーケストラが別物として存在していて、おたがいにあまり深くかかわってない印象です。たとえばDeep Purple(ディープ・パープル)の『Concerto For Group And Orchestra』みたいな感じでしょうか(だいぶ違うな)。

結果として、ひとつのパッケージでリリースされた『Sirius B』よりも、さらにヘヴィ・ロック・グループとしてのTherionの姿がシンプルかつストレートに感じられる作品になっていると思います。その分、プログレッシヴ・ロック/ユーロ・ロック的なおもしろみや味わいは減っていますが、それでもユニークな音楽性を持ったグループであることには、変わりはありません。

ここ数作の流れが、オーケストラル・クワイア・メタルとしての高い完成度を追求し、ひとつの頂点を極めた次に、ヘヴィ・ロックとしてのアイデンティティの強化を追求というふうになっていることを考えると、この次の作品がどうなるのか、オーケストラやクワイアは楽曲のなかに生き残るのか、それともよりヘヴィでデスな初期に近づいていくのか、気になるところです。彼らの音楽にプログレッシヴ・ロック的なもの、ユーロピアン・ロック的なものを求めている自分としては、このアルバムよりもさらにオーケストラやクワイアから離れていく・遠ざかっていくのであれば、彼らに対する興味はここまでかなという感じです。

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