RON / CALYPSO
もともとはRosalino Cellamare(ロザリーノ・チェッラマーレ)という名前(本名?)で活動していたRon(ロン)。活動期間も長く、アルバムもたくさんリリースされていますが、自分はじつは3枚ほどしか聴いたことがありません。そのうえ、どちらかというとあまり興味のないカンタウトーレだったりします。
Ronの書くメロディって、きれいですよね。なめらかで破綻がなく、上手にまとまっていると思います。歌声もほどよく甘く、ほどよくひび割れて、聴き心地のいい声だと思います。Sergio Caputo(セルジォ・カプート)などにもちょっと似た声かもしれません。
素直できれいなメロディで、ほどよく聴き心地のいい声なんだけど、それが自分にはちょっとものたりないんです。イタリアのポップスには、きれいなだけでなく、ときにいびつなくらいの強引な展開とか強い個性(クセ)を持ったヴォーカルとかを期待してしまいます。
『Calypso』とタイトルがつけられたこのアルバムも、ほどよく甘くきれいなメロディを持った曲がたくさん収録されています。カリプソというのはたしか南米のほうの音楽だったと思いますが、このタイトルにふさわしく(?)、明るくあたたかなリゾートでリラックスしたような気分になれます。
乾いた音色で美しいフレーズを奏でる演奏は、イタリアというよりはアメリカのポップスを思わせます。メロディ的にも洗練されたものがあり、これもイタリアというよりはアメリカ風。ときにセンチメンタルなオーケストレーションがあり、これがイタリアの味わいをアルバムに加えてはいるものの、中心となる演奏は明るい音色のキーボードが性格づけをしていて、あまり情緒やイタリアの哀愁といったものは感じられません。それに、このキーボードのアレンジが平凡で艶がなく、曲をちょっと退屈なものにしているように感じます。
楽しげで、気楽な感じで、明るくて、美しくて、そういう点ではいい感じのアルバムだと思います。ただ、日本ではなかなか見つけにくい、手に入れにくいイタリアのポップスを、わざわざイタリアやスイスなどから取り寄せて手に入れている自分がイタリアのポップスに望むのは、もっと「イタリア!」を感じさせてくれるものなんですよ。その点からいうと、Ronの作品は、自分の耳には凡庸に聞こえるし、わざわざイタリアじゃなくてもいいのではないかなと感じてしまうんです。
逆にいえば、イタリアにあまり思い入れのない洋楽ポップスのファンには聴きやすいのかもしれません。
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