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2004/07/20

4人の食卓

映画『4人の食卓』を観てきました。

『猟奇的な彼女』主演女優による韓国ホラー映画みたいに紹介されていたような気がしますが、これはホラーじゃないですね。トラウマ系サイコ・スリラー?

ところどころ、エグイです。高層マンションの上階から幼児を落とすシーンとか、坂道の途中に座っている子供がバックしてきたダンプカーに踏み潰されるシーン、その踏み潰された子供がマンホールのなかに捨てられてるシーンとか、飛び降り自殺して落下していく女性と目が合ってしまうシーンなど、見てて厳しいです。そういったことが主人公ふたりのトラウマになり、そのトラウマが心に引き起こす夢とも幻とも現実とも判然としないヴィジョンに苦悩していくんですね。

電車のなかで母親に毒殺されたふたりの子供がなぜ“彼”の「食卓」に現われるのか、その理由はよくわかりません。ただ、「ふたりの子供」が目の前で死んだ、「ふたりの子供」を助けられなかったということが、“彼”にとってはヴィジョンをよみがえらせるトリガーにはなっていますね。電車のなかで死んだ、ふたりの子供。幼少期に“彼”の目の前で死んだ、ダンプに踏み潰された子供と家事で焼け死んだ妹。

たまたま“彼”の食卓で「ふたりの子供」を見てしまった“彼女”にとっても、霊媒体質というご都合主義的な能力を与えられているのがなんだかなぁという部分はありますが、子供がふたりというのは意味がありそうです。映画のなかでは、マンションのベランダから落とされて殺される子供は、“彼女”の子供ひとりしか映りませんでしたが、投げ落とした“彼女の友人”は育児ノイローゼで、「子供を私に近づけないで」といっていました。それに対して“彼女”は「あなたの子供じゃない」と答えているシーンがありました。ということは、きっと、実際に“彼女”の目の前で死んだのは、“彼女”の子供と友人の子供のふたり。ふたりとも、マンションの下のコンクリートに打ち付けられて死んだのじゃないでしょうか。

つまり、“彼”の食卓で「死んだふたりの子供」を見た“彼”と“彼女”には、その時点でどちらにも「目の前で死んだ子供、助けられなかった子供」が、ふたりいたわけです。“彼”にとっては、忘れていたその記憶が、目の前で実際に見たふたりの子供の死体というかたちで現われたのかな。では、“彼女”も同じ「形」で見たのはなぜ? やはり霊媒体質だからなのでしょうか。このへんが、釈然としないといえば、釈然としない。

あと、“彼”の婚約者の役割、立場というのも、ちょっとよくつかめなかった。けっきょく婚約者は、“彼”の元には返ってこないのでしょう。最後のほうで“彼”が、“彼女”が選んだガラスの食卓を(この食卓に死んだふたりの子供がいる)粉々に壊し、“彼女”に「戻ってきてくれ」と電話をするシーンがあります。しかしいちばん最後のシーンでは、食卓はそのままで、“彼”のほかに「死んだふたりの子供」と「死んだ“彼女”」が食卓を囲んでいます。自分が思うに、おそらくこちらが真実。“彼女”を信じられなかった(信じたくないと思った)せいで、結果として“彼女”を死に追いやってしまった“彼”。またひとり、“彼”の目の前で死んだ、助けられなかった人が増え、その人が“彼”の食卓に着くのです。

あれ、もしかして“彼”も死んでしまったのかな。“彼”が“彼女”を信じなかったせいで“彼女”は死んでしまった。“彼”の婚約者も“彼”を信じようとせず、話を聞こうともしなかった。ここに関連性を求めるなら、婚約者に信じられなかった“彼”も死への道を進むのかも。ということは、食卓は本当に壊され、最後のシーンがヴィジョン? う~ん、よくわからなくなってきたぞ。

いずれにしろ、怖い映画というよりは、悲しい話だと思います。横溝正史や江戸川乱歩が好んで書きそうな、あるいは『人間の証明』などにも通じそうな、悲しみを感じます。貧しい時代の貧しい生活のなかで避けることができずにおきてしまった忌まわしい出来事が深く心の奥底に暗い影を落とし、貧しさから抜け出した現在にも一点の染みとなって悪い影響を与えることから、あらたな忌まわしい出来事が起きる……。

観終わったあとに、いろいろなことを考えさせる、思わせる映画でした。もう1回観ようかな。それとも小説のほうを読んでみようか。

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