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2004/06/27

デイ・アフター・トゥモロー


CGはなかなかよかったです。「いかにもCG」って感じではなくて。ストーリーはシンプルですね。人間由来の自然災害(言葉として変だな)で北半球が凍結し、北半球の人類はほぼ滅亡。それを予測していた(到来時期は思いっきり読み間違えてたけど)気象学者が、凍結したニューヨークに残っている息子を助けに行く。そのくらいの話です。たいして深みはありません。でも、見た目の部分の大仰さで楽しめたから、それでよしとしましょう。

主人公の親子以外に、登場人物、ちょっと多すぎですね。それらの人々になんとなくバックストーリーを持たせたのに、それを少しも掘り下げることなく映画は進んでいくので、彼らのストーリーが何の意味を持たずに凍結していく。なので、彼らの「生きた姿」がぜんぜん感じられない。主人公親子の妻・母親である女医と病気の子供とか、スコットランドあたり(だっけ?)で海流の温度をずっと計測している学者さんたちとか、そのほかにも「ドラマ」を持ってそうなほのめかしのある人たちがいっぱい出てくるんだけど、みんなほったらかしです。

そもそも主人公親子自体、人としてのドラマが薄いですね。父と子の関係も、それぞれがどういったキャラクターを持った人物であるかについても、説明的なシーンがちょろっと入るだけで、実感として伝わってこない。人間ドラマの部分を観て楽しむことはできない映画だと思います。

地球に氷河期が訪れ、北半球が凍結するという現象が起こりうる理由については、それなりに映画のなかで説明されていたので、学問的なことはわからないけど、そういうこともあるのかもなということで、映画の設定のなかに入っていく助けになりました。でも、異常気象が始まるときには、なぜ始まるのか、この先どれほど被害が大きくなっていくのかについて調査し、騒ぎ、絶望するシーンとかがいっぱいあったのに、あの終わり方はなに? 異常気象の終結については、なんだか気づいたら終わってたみたいな感じで、あまりにあっけない。どうして終わったのか、そろそろ終了ということは観測から予想できなかったのか、NASAや気象学会はなにやってたんだよという印象ばかりが残ってしまいます。

主人公息子が思いを寄せる女性の敗血症にしろ、船のなかでのオオカミとの戦いにしろ、あまりにあっさりしすぎ。主人公はもっとすごく大変な困難に向かい合わないと。ていうかあんたたち、何日も建物内に避難しているわりには、みんな身奇麗すぎ。あの状態でみなさん、毎朝ひげをそってらっしゃったんでしょうか。それと、主人公父と一緒にニューヨークをめざした仲間たち。なんだか全然意味がなかったぞ。主人公父ももっともっと大変な困難に立ち向かわないと。

などなど、突っ込みどころというか、突っ込まずに流して観てしまったほうがいいところは満載です。でも、それはそれとして、目の前に映し出されていることをそのままに観て「寒そう」とか「すげぇ」とかいって楽しんじゃえば、それでいいんじゃないんでしょうか。

ちなみに、主人公息子と一緒に図書館に避難していて最後まで助かったおじさんは、図書館の館長なのかしら? ずっとグーテンベルクの初版本聖書を抱えていた人。暖を取るために図書館内の本をどんどんと暖炉にくべる主人公たちからその本を守るために抱えていたわけですが、最後に救出されてヘリコプターに乗るときも抱えてましたね。映画内ではこのおじさん、「私は神を信じてなどいない」とかいってたけど、ここってすごく宗教くさいシーンだと感じました。

グーテンベルクの初版本聖書。世界で最初の、人類初の「印刷された神の言葉」てことですよね。これってモーセの十戒に見立ててるのかなぁ。神の十戒が刻まれた石版って、おそらく人類史上初めて「文字」というかたちで神の言葉が人々に渡されたものなんですよね、きっと? はじめての印刷物と、はじめての石版。なんとなく、リンクしません? 十戒を守っているかぎり、ヤハウェはイスラエルの民を見捨てない、必ず救う。聖書を守っているかぎり、キリスト教信者は父と子と聖霊により救われる?

ほかにも聖書の投影っぽいシーン、シチュエーションがいくつかあります。

たとえば、主人公父がもうすぐ主人公息子の下にたどりつくという少し手前、主人公父は、凍死して雪に埋もれた真っ白な死体をいくつも見つけます。彼らは、もとは主人公息子と一緒に図書館に避難していた人たち。図書館の外を多くの人たちが避難していくのを見て、正確な情報も持たないまま、自分たちも街を出ようと決めた人たち。主人公息子が止めたのにもかかわらず、気象学者の父が「嵐はますますひどくなる、屋内でじっとしていろ」といった言葉を伝えたのにもかかわらず、自分の考えで出て行った人たち。彼らがみんな、真っ白になって死んでいるんです。まるで「塩」のように真っ白になって。

滅ぼされた街と、塩の塊にされた街の住人。これって、ソドムとゴモラ? 神の言葉を忘れ、私利私欲、悪徳、男色に満ちた街をニューヨークに投影したんだろうか。

気象学者である「父」は、これからニューヨークになにが起きるかを知っていた。それを「子」に伝えた。「子」は「父」の言葉を「民」に伝えたけれど、その言葉を信じたのは一部の者だけ。「子」の言葉に背いた者たちは死んだ。

すべてを知る「父」なる神は、神の言葉を伝えるために「子」であるイエスを地上に降ろした。「子」であるイエスは「民」を救うために「父」である神の言葉を説いた。しかし「民」の多くは「子」イエスを信じず、「父」である神の言葉に背き、滅びへの道を選んだ。

めちゃめちゃ自分勝手な深読み・邪推ですが、なんとなく関連性を感じてしまいます。あと、よく覚えてないんですが、スコットランド沖で海流の温度が極端に下がったっていうところ、下がった温度は13度ではなかったでしたっけ? 13。不吉な数字。それを観測していた学者のチームは3人で、主人公父のチームも3人。3は聖三位一体につながるのでラッキーナンバーですね。

なんてことを観たあとに考えるくらいには楽しい映画でした。

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コメント

 コメントありがとうございました。
 前半部分は全く同じ意見です。やっぱそう思うよね。(笑)

 後半はちょっと邪推しすぎかも。(笑)あと下がった温度は14度じゃなかったっけ?(自信なし)
 でもまあそういう見方もあるということで感心しました。もしかして宗教色を出そうとしてたんだけど、ヘタレでそれが表現できてなかったのかもしれませんし。(笑)

投稿: yas-msa | 2004/07/14 14:23

『外国映画の歩き方』という本を読んでから、やたらと「この映画のシーンには、なにか隠されたメッセージがあるんじゃないか」と邪推するのがすっかり楽しみになっちゃってまして(笑)。
この本、おもしろいですよ。日本人は見逃しがちな映画のなかに感じとれる「西洋カルチャー」の匂いを無理やり(ここがポイントか。笑)感じとって、どんどん邪推しようていう本です(そんなテーマじゃないだろ?)。機会があったらぜひご一読を。

投稿: もあ | 2004/07/15 09:12

ほうほう、なるほど。
とりあえずは聖書を読破したいなーと思ってます。ほとんどの物語のネタは聖書にあるという話を読んだことがあります。

投稿: yas-msa | 2004/07/15 21:59

聖書そのものを最初から読破しようとすると、けっこうきついと思います。新約の福音書くらいはなんとかいけますけど、黙示録は書いてあることがワケわからんし、書簡もなぁ。使途行伝はまだ読んだことがないので知りません。
旧約は……あまりに膨大で、記述は簡潔すぎ、創世記の途中で挫折しました。これはかなりの気力がないと読みきれないと思いました。
聖書そのものよりも、徳間文庫ででている『小説「聖書」』(旧約偏は上下巻、新約偏は1冊)から入るほうが、聖書に書かれている「物語」を楽しむという点ではよいように思います。

投稿: もあ | 2004/07/17 09:30

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