Antonello Venditti "Antonello nel paese delle meraviglie"
ゆうなれば、Antonello Venditti(アントネッロ・ヴェンディッティ)のベスト盤みたいなものです。ただ、普通のベスト盤と違うのは、全曲がアレンジ違いで再録音されていること。しかも、全曲を通してバックにブルガリアン・シンフォニー・オーケストラがつき、コーラス隊が入り、シンフォニック・アレンジがされてます。
……って、ここまで書くと、もう間違いなく自分の大好きな“ツボ”です。フルオーケストラにコーラス隊。合唱ポップス・ファンの自分にはたまらないはずなんですが、じつはそれほど燃えないのよねぇ、聴いてても。
なんかね、このオーケストラ、音色に艶がないんですよ。東欧のオーケストラってそういう傾向が多いようなんですが、つややかでしなやかというよりは、ちょっとざらついた音色で「ひなびた感じ」がそこはかとなく漂っちゃう。ヨーロッパの歴史と伝統をまとった重厚で深遠な、かつ華麗な感じがね、あんまり感じられない。
さらにね、このオーケストラのアレンジは、どうなんでしょ? どうも落ち着きがないというか、いろいろと音やフレーズを出しすぎというか、そんな感じ。オーケストラの担当をしたの、いったい誰だよ!? と思ってみてみたら、Renato Serio(レナート・セリオ)だからなぁ。クラシカルなアレンジが上手な人なのになぁ。
オーケストラの音色とアレンジがもうひとつ自分の好みにはまらないのが、いまひとつ聴いてて燃えられない理由の大きな要素ではあるのですが、もっと根本的な部分でいうと、Antonelloの曲って、こういったオーケストラ・アレンジにもともと向いてないような気がします。Antonelloの曲自体は、自分は嫌いじゃないんですけど、オーケストラにしちゃだめなんだろうな。クラシカル・ミュージック的な要素が少ないんでしょうね。だから、せっかくコーラス隊が入って美しい合唱を聞かせてくれているのに、そこに声楽的な、あるいは賛美歌的な、精神の高揚といったものが感じられない。一生懸命オーケストラが鳴っているのに、クラシックというよりは安い劇伴風になっちゃう。そして致命的なのは、オーケストラの音色と演奏が、Antonelloのヴォーカルおよび曲と融合していない。それぞれがバラバラに、ときにはぶつかってしまっているように聞こえるんですよ。
ま、これはこれで楽しめはするんですが、たとえばRenato Zero(レナート・ゼロ)の最近の作品とか、Amedeo Minghi(アメデオ・ミンギ)のライヴ盤とかとくらべると、オーケストラの“輝き方”“生き方”がぜんぜん違うなぁと。Antonelloは変にオーケストラへの色気なんて出さないで、普通にポップ・ミュージックのアレンジでやってたほうが、おたがいにとっていいんじゃないかなぁと、そんなふうに思ったのでした。
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